前日の続き。

 先日の文章が分かり難いと思ったので、実例でも。


 例えば、スクウェアの作品で「パラサイト・イヴ」(98年)という作品がある。

パラサイト・イヴ

パラサイト・イヴ

 この作品を楽しむ要素の一貫として、世界観のベースとなっている科学知識・細胞小器官ミトコンドリアを知っているか、全く知らないかによって第一印象が変わるはずだ。
 瀬名秀明の原作(又は映画版)を読んでいるかどうかでは、もっと見方が違うはずだろう。(作品の世界観はかなり違う)人によってはコレで評価が分かれるに違いない。


 しかしそれだけでなく、ゲーム版に限り「パラサイト・イヴ」は当時流行していたドラマ「Xファイル」のテイストに強く影響を受けていて、Xファイルのファンであればまた違った視点で楽しみ、論ずることの出来るゲームだろう。


 ゲームの舞台は雰囲気充分に描き込まれたニューヨーク・マンハッタン島だが、実際のクライスラービルやサブウェイ、チャイナタウン、セントラルパーク、ソーホー等の舞台に詳しい人だとまた違った楽しみを見出せるかも知れない。


 音楽という視点もある。下村陽子氏の手がけた同作品の音楽は素晴しいもので、サウンドトラックの評価も極めて高くファンも多いのだが、なんと現在絶版(!)。オークションサイトでは高額で取引されている。私も現在進行形で中古CDコーナーを探し回っているファンの一人だ。


 当時としては鮮烈だったアヤ・ブレアの艶かしいキャラクターも作品の大きな魅力である。
 スクウェアのお色気要員として大人気だった同キャラクターの人気は10年以上が経った今も健在で、世界観を異にした完全新作The 3rd Birthdayで三たび主役を張る予定だ。


 更にまた違った視点としてプロダクションIGが制作したアニメ「BLOOD+」(05年)がある。
 全く無関係な作品同士だが、「パラサイト・イヴ」をプレイしたことのある人なら同作品が「BLOOD+」にちょっと尋常じゃない程多大な影響を与えていること気が付く事ができるだろう。


 さてさて、この作品の「楽しさ」を伝えるって、どういうことだろう。
 どの視点から「楽しさ」を伝えればよい? 「ゲーム部分」の楽しさを伝える事だけが、「作品の楽しさ」なのか? ゲーム部分だけだと武器を改造しつつクリーチャーを倒してイベントを進めて行くRPG――と伝えなければならないのだが、果たしてそれだけがその作品の「楽しさ」の核だろうか? 「楽しさ」は今列挙しただけでもこれだけ開かれている。
 ゲームを「楽しむ」というのはコントローラーを握ってる時だけじゃない。
 「ゲームプレイ」以外にも「ゲームの楽しさ」は広がってるし、伝えられる。


 ――と、昨日は言いたかったのであります。