発売直前・龍が如く3特集 第3回

龍が如く3では、東京を離れ沖縄に済む桐生の上に「リゾート開発計画」と「基地拡大計画」というふたつの政治的力が降りかかることになる。
この内の「リゾート開発計画」のモデルとなっていると思われるのが、泡瀬干潟埋立地問題。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A1%E7%80%AC%E5%B9%B2%E6%BD%9F


書いてある通りマリンリゾート泡瀬というのは長くから計画されていた話で、もう数十年の年季の入ってる。ウィキペディア先生は主に漁業関係の問題を取り上げているが、実はそれ以外の問題も山積している。


600億円という財政(税金)をかけて工事が進められているのだが、「経済的合理性が無い」との理由で那覇地裁から一度差し止めを食らっている。
だが、県と市はこれを不服とし控訴。現在も工事は進められている。
その上に作り上げるのがホテルやショッピングモールならまだしもカジノを建てようぜとか言うもんだから、とにかく近隣住民としては気が気でない様だ。


現在でも盛んに抗議活動が行われていて、現地ではニュース報道も盛んである。
「基地拡大計画」に関しては、沖縄問題の潜在的な強迫観念だ。
毎年の様に行われる基地問題の抗議活動は当然泡瀬干潟問題などを軽く凌駕する規模で、親戚・一族ぐるみとなって抗議運動に参加するのも珍しくない。


だが、これにはあまり表層に出てこない現実もある。
沖縄は当然「基地経済」と言う言葉が存在する程収入源を基地に頼っている。
基地反対運動には賛成するが、自分の息子が基地内で働けることになればどの親も大喜びするのが現実だ。基地内での商売は安定的で、高収入だから。


更に抗議運動自体も、沖縄住民の本音としては微妙――というのが本音のところな様である。
前述の様な問題も含まれるが、別問題として「軍用地」の問題だ。
当たり前のことだが「軍用地」の所有者土地の借地料を支給される。
これがかなり割が良い上に、政治・軍事的理由から軍が無くなることはあり得ないので、安定的な投資対象として注目されている。実際、沖縄の軍用地主はかなり軍でオイシイ思いをしていて、軍が無くなると困るという住民も少なくないのだ。


かと言って、「軍用地主」と一般的な沖縄住民が対立している訳ではない。
軍用地主も一派的な沖縄住民の状況を理解しているし、口では「俺の土地を軍がカネで取っていった!」的な事を言う。一般住民も、狭い沖縄なので実は親戚に軍用地主が居たり、友人の親戚が地主だったりする。
両者が両者の状況を理解した上で口を揃える。
外から見るよりもスノッブな関係が成り立っているのだ。



それを代表する良い例が、名護への普天間基地の移設計画であろう。
米軍基地が自分達の街に来ると聞いて、多くの住民が反対の声を挙げた。
当然、事前の市民投票でも基地の移設反対意見が多数となったのだが、住民の選んだ市長は逆の回答を弾き出し、基地移設は可決となった。*1
口ではともかく、軍がくれば軍人向けの商売ができる。地主は儲かる。
逆に基地を失った普天間市は“にょろーん”である。


最後に誤解の無き様に書いておくが、基地被害と言うのは確かに存在する。
先日は金武町*2の民間の駐車場の車が50口径の弾丸を被弾するという事件があった。
50口径はその驚異的な破壊力から、人間に向けての発砲が禁止される程の破壊力を持った弾丸だ。もし人間に当たっていたら――と思わない人間は居ない。


だが筑紫哲也が声を上げるまで本格的抗議運動が行われていなかったことからも分かる様、沖縄という社会は見かけ程おおらかで開けっぴろげではなく、かなり閉鎖的でスノッブな一面を持っていて、軍に関する問題もそういう気質と利権が関係して複雑な経緯を辿っている。

次回はそろそろネタも尽きるのでラスト、番外編です。

*1:勿論これを国の横暴であると片付けてしまうのは容易だし、魅力的な考えではある。そしてそういう面も存在するであろう。だがそれだけでは、あまり事実に近いとは言えない。

*2:――「きんちょう」と読む。米軍の中でも最も危険とされるあの「海兵隊」の基地があり、治安も良いとは言えない。というか悪い。コザよりもよっぽど怖い街である。