シン・シティ


映画、とくにアクションなんかは好物な方なのです。
でもぼくは、よくアメコミ映画をスルーしてしまう。
スパイダーマンバットマンをギリギリ見ている程度。
何故かは分からない。
昨今のアメコミ映画ブームの火付け役となった筈のX−MENなどは、遂に手をつける前に完結してしまった。残念な限りだ。
だが昨年のアイアンマン、ダークナイト等の大作が続くと、さすがに観てない続きは恥ずかしい。

そんな訳で、ビデオ屋で観忘れていたアメコミ映画を掘り返してみることにしたのです。
探せば沢山出てくる。ハルク、キャットウーマンスーパーマンリターンズ、etc……。

品揃えの悪い近所のビデオ屋にしては凄い量。
みんな観てるんだろうな。
どれから手をつけるべきかとしばし悩んだ挙句、フランク・ミラーなら問題無かろうとシン・シティを観ることに。

この際だから正直に言っていまうが、『タランティーノ』と『オムニバス』この2つの単語に、きっとB級のノリ全開の映画だったりするんだろうなと偏見を抱いていた。
すんません。すげえ真面目な作品でした。
全編を通し、ミラー作品独特のハードボイルド調のモノローグが用いられる。
このモノローグが内政的であることが、この物語の主題が暴力でないことを明確にしている。
主人公達は一貫して過激な暴力を振るうことのできる強靭な男達だ。
だが彼等は自身が強靭であるからこそ、孤独であることを強いられている。



フランケンシュタインの怪物の様な容姿を持つ大男、マーヴ。
不安と焦燥に苛まれ、遂には幻覚で死体と会話をしてしまう殺し屋、ドワイト。
狭心症を持つ老刑事、ハーディガン。



彼等は常に心の中で寂しさを抱え、優しさ求めている。
彼等の残酷さは、そのまま『愛する女性』への優しさとなっている。
彼等の優しさが、彼等の手を血に染める。
見事な構図だと思った。



確かに、第一印象は凄い。
アバンが明け早々に、ロアークJrの手と股間を打ち抜くハーディガン。
続くマーヴのパートで、暴力は更に過激さを増す。
観るものは独特な映像美と暴力性に引き込まれる。
しかし、そこからだ。
愛した女性の為に復讐の道を選ぶマーヴの後は、街の娼婦達を守る為戦うドワイト。
そして少女を守ろうとするハーディガン。
暴力は徐々に薄まり、最後には優しさが残る。
彼等の運命は重ならない。
だが映画が終わり、もう一度シン・シティという街を俯瞰したとき、ぼくらはそこに優しさが隠れていたことを知っている。