ゾンビーノ


 舞台は1950年代のアメリカ。宇宙からの謎の放射線により死体が蘇りゾンビが人を襲う様になったパラレルワールド。突如現れたゾンビ達との苛烈なゾンビ戦争に勝利し、ソンビ達は2種類に分かれた。
 1つは、街を隔てるフェンスの外を徘徊する、危険な野生のゾンビ。
 もう1つは、ゾムコン社の創ったゾンビ調教首輪で従順な奴隷orペットとなったゾンビだ。
 ティミーの家にも母親の希望で念願のゾンビがやってくる。
 いじめられっ子で友達の居ないティミーは、ゾンビに『ファイド』と名付けて友達になる。
 しかしファイドが近所お御婆さんを食べてしまったことから街にゾンビが溢れ出し、ファイドはゾムコンに返却されてしまうことに――

 頭でっかち君、大いに楽しみました。
 観て良かった。音楽も雰囲気満点。
 こんなにほのぼのとしたゾンビ映画なんて一生の内に何本観れるか分からない。
 カナダで作られた映画なんだけれど、外側からの目線で面白くアメリカを描いている。


 ゾンビも含め、劇中に白人以外が出てこないというのも象徴的なのだが、カラー・オブ・ハートみたいにデフォルメされた(されてないのか?)美しき1950年代のアメリカの郊外住宅地で働かされるゾンビ――という、なんだかマジックリアリズムみたいな絵ヅラが笑わせてくれる。


 考えてみればゾンビ映画の始まりのであるロメロゾンビが60年代後期だったんだし、自然と社会批判・風刺的要素をもったゾンビは常に現代を生きてる。
 50年代を舞台にしたゾンビ映画なんて見慣れないわけだ。
 実は過去に遡るというアイデアは結構な発明なんじゃないだろうか?
 明治維新ゾンビ、ゾンビフランス革命――南北戦争ゾンビなんてのも扱いやすいテーマだと思うのだが、どうだろう。


 話を戻すが、ゾンビーノの舞台はずっと郊外の住宅地だ。
 アメリカで「郊外」を意味する言葉で「サバービア」というのがあるのだけれど、これは『白人専用地域』という意味でも使われる。
 このサバービアが登場したのがちょうど1950年代で、その原因が何かっていうとやっぱり有色人種が怖いから、都心部から離れて住みたいってコトだったのね。


 50年代当時の白人にとっての身に迫る危険はやっぱり下層労働者である有色人種で、郊外住宅地が一種の安全地帯として機能していた。だからこの映画のゾンビは言うまでもなく『有色人種』で、そういう理由でこの映画には白人しか出てこない。
 個人的にはかなりキマってる舞台設定・構成だと思った。


 テロ以降保守的に戻りつつあるアメリカなので50年代が一概に過去とばかりも言っていられないのですが――とにかく素人目にもしっかりとゾンビ映画していたと思います。傑作。



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